昔、映画の「OUTBREAK」を見て、エボラウィルス(画像参照)の存在を知った。劇中ではエボラウィルスを更に強力にしたモターバウィルスが登場、アウトブレイクを引き起こすという非常に恐ろしい映画であった。この映画の場合、幸いにも宿主からワクチンを生成する事が出来、ハッピーエンド?で幕を降ろす。
モターバウィルスのモデルとなったエボラウィルスだが、映画のモターバウィルス程では無いにしろ、極めて致死性の高いウィルスで、感染するとまず助からないと言われている。
日本でも、第一類から第五類までに分けられた内、最も危険度が高い第一類感染症に「エボラ出血熱」が該当しており、その感染の危険性を物語っている。(WHOのリスク分類に於いても最高レベルであるレベル4に該当。)
尚、他に第一類に分類されている感染症は、エボラ出血熱の他にクリミア・コンゴ出血熱(ブニヤウイルス科ナイロウイルス属)ウィルスに依る「クリミア・コンゴ出血熱」、アレナウイルス属に依る「南米出血熱」、ペスト菌に依る「黒死病(ペスト)」、ラッサウィルスに依る「ラッサ熱」、マールブルグウィルスに依る「マールブルグ病」、そして一応撲滅したのだが「天然痘」が該当している。(細菌兵器としてテロリズムに利用される可能性が有り、撲滅後も第一類となっている様。)
第一類感染症の中でも現在最も猛威を振るっているのがエボラ出血熱である。今年に入って大流行しており、ギニア共和国を中心にアフリカで多数の感染者が発生している。8月で2千人を超える人々が感染し千人以上が死亡しているとの事。
エボラウィルスは致死性が高く、また潜伏期間中は殆ど感染力を持たず空気感染も無い(とされている)為世界規模で流行するパンデミックが起こる危険は少ないとされているのだが、局地的でもこれだけの感染者が発生するとなると、どの様な経路で拡散していくか判らない。
流行している国々では非常事態宣言が出され、WHOも「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を行っている。
最早全世界で、この危機に対応していかなければならない。
日本国内でも旅行者や輸入品の検疫は勿論だが、万が一の国内流行に備え、様々な対策を講じる必要が有るのだが、それもこれもエボラ出血熱に対しての有効な治療方法が確立していないからである。
そんな中、一条の光明が我が富山県から生まれた。
富山と言えば売薬。昔から培ってきた医療技術のノウハウを持つ会社が多いのだ。(「煙草13 (おやつ34)」及び「リラックス度チェッカー」の投稿参照)
「富山化学工業株式会社」も名前の通り富山の製薬会社のひとつで「FUJIFILM」グループの傘下である。
この富山化学工業株式会社はアルツハイマー型認知症治療剤や抗インフルエンザウイルス剤等、多数の新薬を研究開発しているのだが、今回注目されたのは抗インフルエンザウイルス剤(開発コードT-705)通称「Favipiravir:ファビピラビル」である。(商品名「アビガン錠」。)
ウイルスのRNAポリメラーゼに作用しウイルスの複製を阻害。この作用に依りインフルエンザウィルスの種類を問わず効果を発揮し鳥インフルエンザA(H5N1等)型にも抗ウイルス作用が期待される。(「Oseltamivir:オセルタミビル」、商品名「タミフル」等とは仕組みが違う。)
この「複製を阻害する」と言う特徴はインフルエンザウィルスに限らず他のウィルス、つまりエボラウィルスにも効果が期待出来るとして、治験を行う事が決定したのだ。
Favipiravirは今年3月に製造販売の承認を得たのだが、催奇形性等の副作用を認め、安全性に疑問が残る為、現在は新型インフルエンザの流行等により構成労働大臣の要請が有った場合にのみ製造するものとなっているらしい。但しエボラウィルス感染者が出た場合も今月15日に「緊急事態」として承認すると発表。もし本当にFavipiravirがエボラウィルスにも効果を発揮し、(副作用は兎も角として)エボラ出血熱の患者が一人でも多く助かるのであればこんなに嬉しいことは無い。(勿論インフルエンザウィルスに依る死者が減るだけでも素晴らしい事なのだが。)
「越中富山の薬売り」がまた多くの人々の命を救う役に立てるのなら、同じ富山に生きる者として誇らしい。
効果が有る事を祈っている。そして何れエボラ出血熱も天然痘の様に撲滅出来る事を期待しよう。