前回、「VISCONTI」の 「OPERA MASTER DEMO "CLEAR"」を誕生プレゼントのつもりで入手した事を述べた。(画像1~3。画像1は外箱、画像2は飾り箱、画像3は飾り箱を開けた状態、)
Made in Italyの万年筆がこんなに増えるとは正直思わなかった。万年筆は国産かドイツが安定した品質であり、また有名なブランドも多い。実際他人に万年筆を勧めるのであればイタリアのモノを特別勧める事は無いだろう。(「AURORA」で在れば勧めても良いが。)
それでも私がイタリア、VISCONTIを購入してしまった事には、やはりペンとしての本質以外にも魅力が有るからであろう。
OPERA MASTER DEMOの魅力はVISCONTIが生み出した、プランジャー式の吸入方法を見直した「DOUBLE RESERVOIR POWER FILLER」と言う吸入方式を採用している所だ。
「Divina Proporzione Silver」も「PUSH & PULL TOUCHDOWN」と言うやはりプランジャー式の吸入方法を見直した吸入方式である。現在プランジャー式を採用している筆記具ブランド自体が少ないのは欠点が有るからだ。VISCONTIはその欠点を様々なアプローチで克服しているのだ。
まず、プランジャー式の吸入方法について簡単に説明すると、軸内の負圧(圧力差)を利用してインクを一気に吸い上げる仕組みとなる。(通常の回転ピストンを利用した吸入方式は注射器「シリンジ」の様に中を減圧してその分を吸入する。)
機構的には面白いがこのままではペン先からインクが溢れ出てしまう為、インクがペン先に流れる事を遮断する「インク止め」が必要になる。軸尻を緩めるとこのインク止めが開放されペン先にインクが流れ筆記が可能になる。使用後はまた軸尻でインク止めを閉鎖すると言う作業が必要なのだ。(インクが沢山入るモノ程インクが漏れる危険が大きい。)
普通の回転ピストン吸入式より楽に沢山吸入出来る分、毎回の筆記の際が面倒なのだ。これがプランジャー式が現在殆ど採用されていない理由であろう。
そんな中、吸入量を減らしインク止めを用いずともインクがペン先より溢れ出る事を無くし、且つ操作を簡略化したモノがPUSH & PULL TOUCHDOWNである。
逆に、吸入出来るインクの量はそのままに、軸尻を毎回緩めなくても有る程度の筆記を可能にしたのがDOUBLE RESERVOIR POWER FILLERである。簡単に言うとプランジャー吸入で大量に吸入されたインクを貯蔵するタンクと筆記の為の少量のインクを蓄えておくタンクの2つを配する仕組みである。筆記用のタンク内のインクが無くなれば、通常のプランジャー式と同じ様に軸尻を緩めると貯蔵用のタンクのインクが筆記用のタンクに流入、軸尻を閉めれば後はまた筆記用タンクが空になるまで筆記が可能。これなら操作ミスも少ない。理屈は単純だが素晴らしいアイデアで、インクボトルを備えた万年筆とも言えるのだ。
OPERA MASTER DEMOはその構造が見える。(画像4。左上がIDENTITTY CARD、右上が仕様書、左下がクリップの保護用紙、右下が本体。)
尚、"CLEAR"は日本では"RAIN FOREST"(多雨林)の名前で呼ばれ、雨に濡れて輝いている様な茶、緑、青のマーブル模様が非常に美しい。(画像5、6。画像5はキャップを外した状態、画像7は軸尻を緩めて吸入する状態。)万年筆らしい模様を採用しつつもデモンストレーターとして内部が確認出来る構造なのが気に入っている。
また今回はペン先が18Kの金製では無く、23Kの950Pd(パラジウム)製なのも選んだ理由である。
元々OPERA MASTER DEMOは18Kの金製ペン先だったのだが、末期モデルはVISCONTIが新たに採用したパラジウム製ペン先となった。Divina Proporzione Silverが金なのでこちらは敢えてパラジウムを選んだ訳だ。(画像7、8。画像7は私の所有するVISCONTI2本の軸の比較。画像8はペン先の比較で上がOPERA MASTER DEMO "CLEAR"、下がDivina Proporzione Silver。)
材質の違いに依る書き味の違いも感じ取れれば良いが‥(鈍感なので無理かもしれない。)
まだ眺めるだけで、使用していないので何れ使用後のインプレッションも投稿しようと思う。