私が愛用する万年筆のブランドにイタリアの「VISCONTI」が在る。
「万年筆3」の投稿で述べた「Divina Proporzione Silver」と「万年筆8」の投稿で述べた「OPERA MASTER DEMO "CLEAR"」である。どちらも個性が強いが唯一無二の特徴的な万年筆で御気に入りとなっている。また過去には「Alchemy」というこれまたVISCONTIらしい万年筆を紹介した。(同名の投稿参照)
モノ作りに於いては日本とドイツ、そしてスイスとイギリスが拘りを持っており、イタリアはどちらかと言えばデザイン優先と言う印象を持っている。万年筆でも同様で、やはりイタリアのペンは美しいが作りは少々甘いと感じてしまう。日本やドイツの著名なブランドのペンを選べは間違い無いとは思う。しかし私にとっては、VISCONTIや「AURORA」は日本やドイツには無い別の魅力を感じたペンなのだ。
きっとイタリアのモノ作りには感性に訴える様な何かが有るのかもしれない。自動車等でもやはり官能的と表現されるのはイタリア車である。表現が難しいのだが他の国と違い「真面目に遊んでいる」というか‥良い意味で「適当」なのだ。それ故嵌ったらその者にとって掛け替えの無いモノとなるのではないだろうか?
さて、そんなVISCONTIも昨年創業25周年を迎えた。ここで新たに発表されたのが機械式腕時計である。
ドイツの「MONTBLANC」も元は筆記具ブランドであったが、現在は多岐に渡り商品を展開しており、腕時計にも本格的に参入している。初めは紳士用品のひとつを手掛けただけで然程期待していなかったのだが、「Minerva」を買収してからは、クオリティも徐々に上昇し、ムーブメントも仕上げも時計ブランドと比べて遜色無いレベルに達した。今ではモノに由っては購入候補に上がる位である。
MONTBLANCと同じく筆記具ブランドのひとつVISCONTIが新たに手掛ける時計を今回は紹介したい。
コレクションは「ELEGANCE」、「IMAGE」、「SPORT」と大きく3種類に区分されているがケース形状等は同一の様だ。
各々に「GMT」と「UP TO DATE」の2モデルが存在し、25周年の10倍で有る250限定で生産される。
画像1はUP TO DATE SPORT、画像2は正面から見た状態。
画像3はGMT ELEGANCE。画像4はダイヤルの拡大、画像5は背面のシースルーバック。
画像6はUP TO DATE IMAGE。画像7はダイヤルの拡大、画像8は側面から見た状態。
UP TO DATEは3針センターセコンド+デイト(日付)表示と最もスタンダードな機能を有する。ムーブメントは「SOPROD」の「SOP A10-2」らしい。
GMTもよく見かけるビッグデイトと時分秒針、第2時間帯(GMT)が一列に並ぶ配列。少し凝っているのは第2時間帯表示が12時間表示で、10時位置にナイト&デイ(昼夜表示)が配されている点だろうか。(画像9)これだけで結構差別化が図れる。尚、こちらもムーブメントはSOPROD製。(SOP 9351/A10-2)
エクステリアについては同じ形状のケース及びダイヤル配置にも係らずELEGANCE、IMAGE、SPORTのそれぞれの雰囲気をカラーリングやストラップ等で巧く表現していると思う。
全てケース径は42mm、厚みは15.2mm。少々分厚い。ケース素材もどれもSS(ステンレス・スチール)で、IMAGEとSPORTはPVD加工で着色されている。
VISCONTIのペンの天冠部に使用されているエンブレムを竜頭やギョシェ状に使用したり、針の形状が万年筆やペン型であったりとなかなか細かな点も面白い。
ケース形状は8角形(4辺は直線で4辺は弧を描く。)。更に左右にペンのクリップをイメージしたのであろう、2つのブリッジを組み込んだ立体感の有る個性的な形に仕上がっている。同じくイタリアのジュエラーである「BVLGARI」の「OCT」と「ASSIOMA」を万年筆要素を加えて合成したと言う感じに見えるのは私だけだろうか?
仕上げに関しては、初めての時計としては十分合格点だろう。ミドルレンジの時計に迫っている様に見える。ムーブメントの仕上げに関しては汎用ムーブメントだからかもしれないが、まだ粗い印象だ。
残念ながら価格は不明。(日本に輸入されるかも不明である。)一応為替から換算してGMTが約65~80万、UP TO DATEは約40万~55万程度になるのではないかと思われる。この価格なら納得出来るだろう。
「A Bridge over time」。やはり万年筆と機械式腕時計は共に手元を彩る美意識として切っても切れない関係に有ると言えるのではないだろうか。VISCONTIは25周年に大きなチャレンジをしたと思う。
筆記具と時計の蜜月の為にもMONTBLANC同様、時計好きをも唸らせる様な素晴らしい時計を今後手掛けていく事を期待している。(但し、それで本業を蔑ろにされては困るが。)
そして時計好きには筆記具を、筆記具好きには時計を好きになって貰える様な時の架橋になって貰えれば
私も嬉しい。
貴方も「VISCONTI 25th Anniversary Watch」で個性を主張してみては如何だろう。多分被る事は無い時計である。出来れば手首のVISCONTIの時計を眺めつつ、VISCONTIのペンを手に颯爽と契約にサインして頂きたい。