これまで「Mario Botta for CARAN d'ACHE」、「1010」、「1010 CHRONO SPORT」、「CAELOGRAPH」と多くの「CARAN d'ACHE」の筆記具をこのブログで紹介した。(同名の投稿参照)
改めて考えるとCARAN d'ACHEは好きな筆記具ブランドなのだろう。‥と言っても私自身が所有するCARAN d'ACHEの筆記具は「鞄と筆記用具2」の投稿で述べた「Ecridor Collection Chevron Fix pencil」しか無いのだが。
そのCARAN d'ACHEがまた魅力的な筆記具の新作を発表したので紹介しようと思う。
CARAN d'ACHE主要コレクションのひとつである「VARIUS Collection」。
シンプルなCARAN d'ACHEらしいデザインを基に、軸に様々な素材を用いる事で同じ形状のペンでも全く違う表情と感触を味わう事が出来るコレクションである。
尚、VARIUS CollectionはCARAN d'ACHE内では特別(希少)素材を用いたコレクションとなっている。
この中でもこれまで最も有名だったモデルが「IVANHOÉ」であろう。(画像1)「ウォルター・スコット」の小説「アイヴァンホー」の名を冠するこのモデルは中世騎士の鎧である鎖帷子をイメージした軸が特徴的である。
この軸は繊維状の細いSS(ステンレス・スチール)をメッシュに編み込んでおり、懐古的な鎖帷子の雰囲気だけでなく高級感と独特な指触りを持つ事に成功した逸品である。
他に「IVORY」、「CHINABLACK」、「CHINABLUE」と言った中国漆を用いたモデルや、「CERAMIC」、「CARBON 3000」、「RUBRACER」即ちセラミック、カーボン、ハイテクラバーと新素材を用いたモデル、「METWOOD」と「SNAKEWOOD」は木軸のモデル、鰐革を用いた「ALLIGATOR」等も販売されている。
またVARIUS Collectionには含まれないのだが、VARIUSのデザインをそのままに、軸を彫金したり装飾したりした工芸的なモノも販売されている。
そして新たにコレクションに加わったのが今回紹介する「SILAS」である。(画像2)
「VARIUS SILAS」。SILASはシリコン、つまり珪素の事である。
シリコンはこのブログでも何度も登場しているが、最近は機械式時計等でも非常に注目されている素材である。
特に脱進機関係では大きなメリットが期待されており、様々なブランドがシリコンを用いた時計の製作に取り組んでいる。
まさに(スイス)時計業界が注目している素材のひとつがシリコンと言えるだろう。
CARAN d'ACHEも多くの時計ブランドと同じスイスの一ブランドとしてこのシリコンに目を付けたのだろうか?
1010(及び1010 CHRONO SPORT)と言ったスイス産業を代表する機械式時計をモチーフにしたペンは勿論だが、星座表をデザインに組み込んだCAELOGRAPHもやはり(天文)時計にインスピレーションを感じたのかもしれない。
SILASもスイスブランドであるCARAN d'ACHEから生まれるべくして生まれたと私は思う。
SILASの最大の特徴は軸に使われているシリコンシートである。ミラー効果で角度が変わると光の反射加減が変化し様々な表情と輝きを放つ。ギベオンタイプのメテオライトの様な雰囲気も併せ持っていると感じる。色合いも非常に良い。
ゴールドやチタン、鉄、ロジウム等の金属を混ぜたこのシリコンシートをミクロン単位で測定し切断、顕微鏡を覗きながらそのシリコンシート一片一片を寄木細工の様に手作業で重ねたり嵌め合わせて装飾しているとの事。職人の繊細で精巧な技術が要求される非常に手の込んだ軸である。
価格は万年筆が\230,000、ローラーボールが\200,000、ボールペン及びメカニカルペンシル(0.7mm)が\180,000となっている。(画像3。上から順に万年筆、ローラーボール、ボールペン、メカニカルペンシル。)
貴方もVARIUS SILASをその手に、21世紀の素材に触れてみては如何だろう。見る角度でブルーからグレーに色を変える結晶の軸は自然の生み出した美と職人が作り上げた美の双方が揃ってこそ生まれる煌きである。貴方に大きな力と自信を齎してくれる筈だ。