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Channel: 心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく・・
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時計94

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「GALANTE」の「SBLA085 ”Artemis”」の欠点と言うか、個人的に気に入らない点は、実はかなり多い。それこそ私の所有している「Breguet」の「TRADITION 7027」、「PIERRE KUNZ」の「CUPIDON」、「PATEK PHILIPPE」の「Nautilus 5712/1A」(それ以外にクォーツ時計や自分で組み立てた「ORIENT」の時計等も有るが今回も割愛。)と比較しても気になる箇所が多い。(画像1,2。嘗て「時計21-2」の投稿でも披露したが、故「ニコラス・G・ハイエック」氏の真似で上記4本を全て装着した状態。左から購入した順にTRADITION 7027・CUPIDON・Nautilus 5712/1A・SBLA085。画像1は正面、画像2は側面。)

国産と舶来の違いなのか、それとも国柄なのかは解らない。メカニカル(ムーブメント)では四者四様の面白さが有るので個人的には同列なのだが、問題は外装等である。

まず、時計本体について述べる前に飾り箱の安っぽさが酷い。一見高級そうに見せようとしているのが尚更安っぽさに拍車を掛けている。(「時計93」の投稿参照。)
外側の白いラッカーのムラも酷いが、内側の鰐革調の内張りも酷い。正直飾り箱は非常にガッカリさせられた。日本の製品はこういった箇所で手を抜く印象が有る。商品本体だけでなくパッケージングや販売の仕方(アフターサービスやノベルティ)等も顧客を満足させる大きな要因だと理解して貰いたい。

時計本体では、1番初めに気になったポイントが回転ベゼルである。今回のベゼル装飾は前回の投稿でも述べた通り過去に発売されたプレミアムローズシリーズの第1弾「SBLA059」及び第2弾「SBLA061 ”Beauty and the Beast”」に採用されたアラベスク模様がエッチングされている。ここまでは私も良かった。問題はブラックダイヤモンドが8つ埋め込まれた事である。御蔭で何処がマーカー(ダイバーズウォッチなら夜光塗料が使われている場所)か解らないのだ。
SBLA059やSBLA061はちゃんと解る様になっていた。ホワイトのマーカーが一箇所使われており回転ベゼルとして使える仕様(15分毎にブラックのマーカーとなっている)だったが、今回は全く使えない。
8箇所全てが同じブラックダイヤモンドで区別が付かないのだ。(つまり合わせるマーカーがどのブラックダイヤモンドか解らなくなる。)1箇所を普通のダイヤモンドか何かに変えて欲しいと依頼したが却下された。「SEIKO」はこんな所が融通が効かないと思う。
更に、回転ベゼルの固定箇所も90°毎で分単位はずれが生じる可能性が有る。(回転させてカチッと止まる場所が90°のみ)いくらデザインが大事でも回転ベゼルの機能を損なうのは問題では無かろうか?

続いて、シースルーバックに描かれた黒い薔薇である。限定の証とも言えるのだが、正直、サファイアガラスに印刷する意味がよく解らない。
自動巻きで更に「SPRING DRIVE」(以降SD)となると敢えてシースルーバックからムーブメントを見る価値は殆ど無いのかもしれないが、それでも折角の美しく仕上げられた「SEIKO」のみのムーブメントである。態々印刷で見難くする必要は無いのではないだろうか。
私が限定を手掛けるとして、薔薇のモチーフをケースバックに入れるとするなら、サファイアガラスでなく、コート・ド・ジュネーブのみで装飾し易い自動巻き用の回転ローターにでもエングレーブした薔薇を刻むのだが‥工芸的な時計としてもこちらの方が魅力的だと思うのだ。
まあ、一応肝心のSDの調速機構(ローターと電磁ブレーキ部分)は見える様にはなっているので、回転ベゼル程納得がいかない訳では無い。

そして竜頭。オニキスのカボションを埋め込んで有るのはこれまで発売されたモデル共通だが、折角ブラックダイヤモンドに拘った(SEIKOスタッフ談)SBLA085なら竜頭もブラックダイヤモンドにして貰いたかった。拘りが中途半端に感じる。(それならせめて回転ベゼルのブラックダイヤモンドの内のひとつを同色のオニキスでも良いから変更して貰いたい。)

仕上げも気になる。正直仕上げは荒い。
私の持っている時計と比較してもエッジが立っていないと言うか角が須く丸い。同じブレスレットを採用した時計であるNautilus 5712/1Aと比較すると差は歴然。「Grand Seiko」とも差を感じる。全体的にダレた印象なのだ。ピカピカのポリッシュに誤魔化されているが手抜きにしか見えない。
(但し、複雑な形状の為有る程度は妥協が必要とも言える。この形状を丹念に磨くとなると非常にコストが嵩む事だろう。)

同様にブレスレットも裏から見ると余り高級感が感じられず(Cリング式採用はこの際目を瞑る。)、バックルは特に作りが甘い。歪みや切り出しそのままで仕上げ自体されていないのは大きな減点だ。
Nautilus 5712/1Aはブレスレットが勝手に外れるのだが、SBLA085も外れる。多分爪の引っかかりが悪いのだろう。(これは調整を依頼するかもしれない。)
この爪の華奢な感じも気に入らない。重量247gと言う非常に重い時計を支える要の部分である。もっと耐久性の高い作りにして欲しいものだ。

尚、同じブレスレットの時計ながら5712/1Aはスポーツウォッチと認識出来るが、SBLA085は(当たり前だが)全くスポーツには適していない。SDは本当ならばスポーツにも適したムーブメントの筈だが、時計の大きさと重量で邪魔にしかならない。(まあ5712/1Aをスポーツに使うのもどうかと思うが‥)ブレスレットとSD採用でもファッションウォッチの類である。(夜光塗料を採用していない点からも伺える。)まあ、これは欠点と言うより再確認した事である。
それにしても重量247gは、正直重い。腕を動かす度に時計の存在を実感出来るのは有る意味凄い事だと思う。(所謂デカ厚時計が好みの方はこの感じが良いのかもしれない。)

ダイヤルはインデックスや針はGrand Seikoに比類するとは言えないのが残念だが、及第点。十分に綺麗な部類だと思う。MOP(マザーオブパール)も大きさを鑑みるとこれ位の品質で上々だと思う。
針同士の隙間が大きい点は多少気になる。特に時針と分針が離れ過ぎているのでもっと詰めて作って貰いたい。重箱の隅を突いた様な点だが、ダイヤルは大きな欠点が無かったと言える。

取り敢えず現在使用したり、眺めたりしてみてのマイナスポイントはこの様な感じである。もしGALANTE、そしてSBLA085の購入を検討しておられる方は参考にしてみて頂きたい。
唯、私はSBLA085の購入を全く後悔はしていない。大事な事だが、これらの欠点以上に魅力を感じられた時計だからこそ購入を決めたのだ。(尤も、上記の欠点を解消した時計が販売されたら買い換えると思うが。)
それ程、SBLA085(等)の立体感の有るデザインとダイヤル等の妖艶さから放たれる存在感には抗い難い魅力が有ると言える。(それはデカ厚を好まない私が購入を決める位である。)
SEIKOらしくない、日本製らしくない。それでいて心臓は純国産。このギャップに萌えるのか?
SBLA085を含みGALANTEに一度でも心奪われた方は、多分逃れる事は困難であろう。諦めて?購入を御勧めする。私と同じく「馬鹿」の仲間入りして貰いたい。欠点を以って余り有る所有する喜びに浸れる筈だ。
デザインでなくSDに魅力を感じる方はGrand Seikoを選ぶのが、価格的にもクオリティ的にも妥当だと思う。(手巻きならば「CREDOR」となる。)
辛口だったが、SEIKOの今後の改善に期待したい。

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