「MAURICE LACROIX」の新作「Masterpiece Seconde Mystérieuse」はなかなか面白い秒表示を行う機械式の腕時計で、個人的にも結構好みであったので紹介しようと思う。(画像1、2。画像1は全体、画像2はダイヤルの拡大。)
時分針を備えたインダイヤルは2時位置に配され、スモールセコンド(グランセコンド)は6時の位置に配された所謂3針スモールセコンドタイプの時計なのだが、最大の特徴がそのスモールセコンドである。
何やらレーダーや銃火器の照準の様な変わった十字型のインデックス表示がされており、よく見ると最大が60、つまり秒を示している事が判る。しかしこれでどの様に秒を表示するのか?
簡単に説明すると秒針は回転しながら縦横に移動してインデックスをなぞりながら秒を指し示すのだが、正直文章では説明が難しいので、取り敢えず動画を見て頂きたい。 http://www.youtube.com/watch?v=e2Yvo89S6GAのURLにてMasterpiece Seconde Mystérieuseの秒針の動きを見る事が出来る。
MAURICE LACROIXは、嘗て「MASTERPIECE ROUE CARRÉE SECONDE」と言う四角い歯車を用いての秒表示を行う時計を製作した事も有り、そのアイデアが活かされていると感じる。(動画のURLはhttp://www.youtube.com/watch?v=O9cINy7RZA0)
さて今回のMasterpiece Seconde Mystérieuseの秒針の動きは私の中では有る時計に非常に近いと感じた。昔「時計11」の投稿で述べた「PIERRE KUNZ」の「Infinity Looping」である。
Masterpiece Seconde Mystérieuseは名前の通り「ミステリアス」なので、敢えて秒針の機構については説明をしていないらしいが、秒針の動きは規則的である。自転に公転を加えた様な動きもInfinity Loopingと同一である。Infinity Loopingはサイクロイド曲線を利用したモノであろう。対してMasterpiece Seconde Mystérieuseはその動きを直線となる様に設計されているのだろうか?
兎も角良く考えられた動きだ。そして、秒が読み取り難いと言う事も無いのが素晴らしい。
PIERRE KUNZは「CUPIDON」(同名の投稿参照)及び「Triple Retrograde Second」や「Virevoltante」(「東京旅行2」の投稿参照)、「VERTIGO」(「東京旅行24」の投稿参照)等、主にレトログラードを中心に魅せる機構に取り組んできた。(最近は新作が殆ど発表されていないが‥)
考えてみれば「FRANCK MULLER」も、時計を面白く表現する事に長けたブランドだ。この2ブランドが停滞している中、MAURICE LACROIXは最もリーズナブルな価格帯で面白い時間の表現に取り組んでいると思う。(高価格帯であれば「HARRY WINSTON」、「Van Cleef & Arpels」、「HERMÈS」等が思い浮かぶ。)
表現の仕方次第で、こんなにも時計は面白くなる。難しい技術で無くても構わない。アイデアで度肝を抜いて欲しいのだ。
Masterpiece Seconde Mystérieuseも価格はステンレス・スチールで\1,386,000~と決して安いとは言えないが、この機構は評価に値すると思う。
折角ならこの動きや秒針のダイヤルを活かしたデザインなら尚良かったと思う。(例えば先に述べたレーダーや照準を活かしたデザインならもっと面白かったと思う。その点Infinity Loopingはデザインが優れていた。)
Masterpiece Seconde Mystérieuseのスペックは、ケース径43mmで自動巻き。振動数18000bph、パワーリザーブは50時間。十分満足出来る性能を有していると言える。(どうせなら手巻の方が相応しいと思うのだが。)
貴方もMasterpiece Seconde Mystérieuseをじっくりとその腕上で眺めてみては如何だろう。ミステリアスな秒針の軌跡が脳を刺激してくれるに違い無い。それは時計を見つめる至福の時であろう。