Quantcast
Channel: 心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく・・
Viewing all articles
Browse latest Browse all 384

Altiplano 38mm 900P

$
0
0






「Altiplano 43mm」の投稿で2010年のSIHH(ジュネーブサロン)で発表された「PIAGET」の極薄機械式時計を紹介した。
PIAGETと言えば薄型時計の代名詞で、PIAGETもその事をアイデンティティとして、常に薄型への探求を惜しまない。

また「Jaeger-LeCoultre」は技術面でも優れており、PIAGETと同じく薄型(そして小型化)の雄でもある。
PIAGETと同じ「Richemont」の傘下と言うのも有り多分「Val Fleurier」経由の技術提供が有るのかもしれないが、同グループ内で共に切磋琢磨している印象だ。互いに最薄の時計を作り続けている。

そんな最薄を目指す戦いも有る意味、終止符が打たれたかもしれないのが今年のSIHH。PIAGETの新作である「Altiplano 38mm 900P」(以降900P)が画期的且つ素晴らしい完成度であった。

その時計を紹介する前に少々雑談を入れたいと思う。
現在、機械式時計自体は、技術面に於いて最早進歩し尽したとも言われている。様々な新しいアイデアが誕生しているのは間違い無いが、基本的には過去の焼き直しで在ったり、過去の問題点を改めたりしたモノが殆どである。無論過去に無い様なモノも有るが、殆どが独創的な「遊び」や「表現」ではないだろうか?
しかし素材や工作技術等の進化に拠って、不可能が可能になった事も有る。最近話題のシリコンやセラミック等で過去では為しえなかった事が可能になってきた。「RICHARD MILLE」が究極の軽さを持つ時計を作り上げる事に成功し得たのも、素材の進化から生まれた結果のひとつである。(「時計44」の投稿参照)また、「OMEGA」の「Seamaster Aqua Terra 15,000 GAUSS」(同名の投稿参照)も帯磁しない時計として素材の恩恵を受けている。更に帯磁しない事を利点としてこれまで禁忌とされてきた磁石を時計内に組み込んだのが、同じ「SWATCH GROUP」に属する「Breguet」である。
個人的には(時計に限らずだが)このBreguetの様なアイデアが更なる進化を促すと考えている。(勿論その前のOMEGAの取り組みが有ってこそだが。)

つまり発想の転換と言えば良いのだろうか?限界まで知恵を絞った先は視点を変えてみると新たに道が広がるのではないか。
漸く本題である900Pについて述べるが、この900Pも発想の転換に因って生まれた時計だと私は思っている。(画像1)
これまでムーブメントを如何に薄くするか、パーツの厚さと強度、輪列の配置等、様々な試行錯誤を繰り返した事だろう。そのムーブメントをケースと風防で覆い、ストラップを取り付ける事で漸く腕時計として完成形となるのだが、その時点で当然ケースの厚みも生じる。
ならばケースとムーブメントを一体化してしまえば良いと考えて生まれたのがこの900Pである。(一応過去にも同じアイデアの時計は存在したが、量産はされず、またこれ程意味を成したモノでは無かった。)
通常は裏蓋となるケースバックの内側を削り出して、ムーブメントの地板としたのだ。私は画期的なアイデアだと思う。
更に、文字盤もムーブメントと同じ厚みとする為輪列をずらした事も良いアイデアだ。この900Pは表からテンプや歯車が見えるのだが、これはスケルトンやシースルーバックの様に「ムーブメントを見せる(魅せる)」為のモノでは無く、薄く作る故に厚みの有るテンプ等をダイヤルの下方に逃がした結果である。これによって文字盤とムーブメントとケースが一体化した様な作りになった。(画像2、3。画像2は設計図、画像3はパーツを展開した図。)

これまでの時計ではケースはケース、ムーブメントはムーブメント、そして文字盤は文字盤であった。表側から順に風防→針→文字盤→ムーブメント→ケースとなっているのが通常の時計である。しかし900Pは風防→針→ムーブメント(文字盤とケースバックを含む)となっているのだ。薄く作るに有効な訳だ。

当然ながらケースの加工技術が高くないと極めて困難である。ムーブメントからケースまでを手掛ける事が出来るPIAGETならではと言える時計だ。

ケースバックが地板となる為、シースルーバックでは無いが、私の所有するBregeutの「TRADITION 7027」の様に表から美しく磨かれたテンプや歯車の動きが見られる。スケルトン風且つ仕様上ダイヤルが偏心したエキセントリックダイヤルなのでモダンな印象を受ける。
デザインはドレスウォッチに相応しく、ケース径38mm、ケース厚3.65mmと言う見事なプロポーションは他の追従を許さない。全てが凝縮された様な1本である。18KRG(画像4)で\3,325,000~。

貴方もAltiplano 38mm 900Pで、極限の技術と新しいアイデアを味わってみては如何だろう。
そしてそのムーブメントの動きまで十分に観察して貰いたい。発想の転換、そして可能性を自身でも生み出す事が出来るかもしれない。尚、現在は38cmのレディースウォッチも多々存在する為、この900Pにダイヤモンドがセッティングされたジュエリーウォッチ(画像5、6。画像5はメレダイヤモンドをセットしたベゼルのモノ、画像6はバゲットカットダイヤモンドを含め、更に多くの部分にダイヤモンドをセットしたモノ。)は女性にも是非身に付けて頂きたい。PIAGETのもうひとつの顔であるジュエラーとしての魅力も感じ取る事が出来るだろう。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 384

Trending Articles