「本18 (時計68)」及び「本19 (時計79)」の投稿で、故「ジョージ・ダニエルズ」氏の著書「THE ART OF BREGUET」と「WATCHMAKING」を所有している事を述べた。
ダニエルズ氏が遺した著書を代表する3作がTHE ART OF BREGUET、WATCHMAKING、「The Practical Watch Escapement」であり、これらはジョージ・ダニエルズ3部作と称されている。
私はこの中の2冊を所有している訳だ。古典的機械式時計に興味が有る者には欠かす事の出来ない本と言える。
さて「本19 (時計79)」の投稿で、ダニエルズ氏関連の本をもう一冊持っているとの述べたが、3部作最後の一冊であるThe Practical Watch Escapementでは無い。
「関連」と記載した通りで実はその一冊はダニエルズ氏が著したモノでは無い。
「George Daniels A Master Watchmaker & His Art」。(画像1)
「Michael Clerizo」と言う時計ジャーナリストに因ってダニエルズ氏の生涯と彼の遺した遺産について言及されている、客観的にダニエルズ氏を捉えた一冊。
ダニエルズ氏に対するインタビューやダニエルズ氏が手掛けた作品やスケッチ等の資料等を基に作られた本書は、ダニエルズ氏を尊敬する全ての方に捧ぐ伝記である。
私は「DE VILLE HOUR VISION」及び「時計38」の投稿で、ダニエルズ氏と「CO-AXIAL」脱進機について触れているが、現代の時計師の中でも最も偉大な人物だと思っている。
独立時計師として成功し、また私自身が欲しいと思える時計を多く製作している人物は他にも多々存在するが、時計業界に与えた影響を鑑みると現代の時計史に於いてダニエルズ氏を超える人物は未だ登場していない様に思える。
嘗ての時計師として、多くの業績を残した偉人が「Breguet」の祖「アブラアン・ルイ・ブレゲ」。
(20世紀~)21世紀ではダニエルズ氏がそのブレゲ氏の偉業に近い立場に或るのではないだろうか。
今になって思えば、ダニエルズ氏がBreguetの作品の研究をしていたのは偶然では無く必然だった様に感じる。
そしてGeorge Daniels A Master Watchmaker & His Artでは、ダニエルズ氏が、時計修理に魅せられ、自ら時計を創造するに至るまでの葛藤や苦悩、そして得た喜び等が綴られる。
また運転、エンジン、レストアと自動車好きであったダニエルズ氏は、自動車から学んだ多くを時計の修理及び製作に取り込んでいる。趣味に於いても拘りを持っており、それを活かした人生を歩んだと言えるだろう。
画像2~4は本書の写真。
画像2はダニエルズ氏本人、画像3は同ダニエルズ氏が作製した懐中時計、画像4は「OMEGA」の自社ムーブメント「cal.8500」系に搭載されているCO-AXIAL脱進機。
英語が読めない私でも、この本は手元に置いておきたかった一冊である。
そして改めて機械式時計は、芸術品・工芸品に成り得ると実感させられた。