「ARNOLD & SON」と言う時計ブランドが非常に気になっている今日此の頃。
ARNOLD & SONに触れる前に少々時計のメカニズムについて復習してみたい。
よくクォーツ時計は1秒毎に秒針が動き、機械式時計は流れる様に秒針が動くと表現される事が有る。実際に時計をクォーツか機械式か見分ける為に秒針を見て判断する事は多い。尚前者をステップ運針、後者をスイープ運針と呼ぶ。
しかし、実は逆で本来であればクォーツの方が流れる様に動かせるのだ。
理由は振動数と言う時計が刻む事の出来る最小の時間単位が違うからである。通常クォーツは1秒間に32768振動するが、ハイビートと呼ばれる機械式時計でも1秒間8~10振動でありクォーツの約1/3200である。簡単に言えば、10振動で有れば、時計は1/10秒を刻むと言う事である。クォーツは1/32768秒を刻む事が可能だ。但し通常のクォーツで1/32768秒を刻むと電池の消耗が激し過ぎるので、消費を抑える為に敢えて1秒毎に秒針を動かしているのだ。(ゼンマイで駆動する「SEIKO」の「SPRING DRIVE」の秒針は流れる様に動く。)
機械式時計も厳密にはステップ運針である。柱(振り子)時計等の超ロービートになれば1秒で1振動等も当たり前である。これは脱進機と呼ばれる時計のリズムを刻む部分で変わってくるのだ。腕時計の場合は1秒間5~10振動が殆どの為、流れる様に秒針が動いている様に見えるだけである。
つまり、大抵ステップ運針はクォーツ時計、スイープ運針は機械式時計で判別出来るが、そうでは無いモノも結構多いのである。
冒頭に述べたARNOLD & SONは現在、機械式時計で有りながらステップ運針の時計を多く手掛けているブランドである。
いくつかのモデルはハイビートである28800bph(1秒間8振動)ながらステップ運針を行うデッドビート機構が組み込まれている。(ARNOLD & SONではデッドビートセコンドを「true beat seconds」と表記している。)
デッドビート(ステップ運針)にする場合は大抵脱進機をその様なモノにするかルモントワールと呼ばれるコンスタントフォース(トルクを一定にする機構)特殊な機構を組み込む必要が有り、価格はかなり高額になる。(だから大抵の機械式時計はスイープ運針なのだ。)腕時計(及び懐中時計)のステップ運針が少ないのはこういう理由からである。逆に言うとステップ運針の機械式時計は希少であり凝った作りなのだ。
だからこそか?私はステップ運針の機械式(腕)時計に惹かれるのだ。審美面に於いてもステップ運針のムーブメントは美しいと思う。(特にルモントワールのムーブメントは魅力的だ。)
ARNOLD & SONはルモントワールの様な高額な機構を組み込まずにデッドビートを巧く採用したと言えるだろう。(画像は、ダイヤル面にデッドビート機構を搭載した「DSTB」。)
次回はそのARNOLD & SONの中でも特に注目の時計を紹介しようと思う。