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Channel: 心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく・・
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時計87

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前回、定期的に行っている手持ちの機械式時計の歩度測定結果について述べた。時計を語る上で精度は永遠のテーマである。機械式時計に精度をそれ程求めていない私でも、高精度の方が良いとはっきり言える。
今回は機械式時計の精度保証について少々考えてみたいと思う。

私が所有している時計は全て所謂「クロノメーター」規格では無い。
クロノメーターとはスイスクロノメーター検定協会(画像参照。COSC : Controle Officiel Suisse des Chronometres)というスイス政府公認機関が行う時計の精度検査に合格した時計(ムーブメント)の事である。(ドイツでは違うので取り敢えずスイスの規格として話を進める。)

5姿勢3温度での精度で15日間の検査を行い、平均日差、平均日較差、最大日較差、垂直・水平姿勢差、最大姿勢偏差、温度係数、復元差を測定、合格した時計(ムーブメント)を搭載する時計に「Chronometer」の表記が許される。

まあ様々な合格基準が有るが平均日差-4〜+6秒(ムーブメントの径20mm未満・面積314m屬両豺腓蓮檻機繊棕孤叩飽米發痢崟催戮鮟个校僚侏茲觧廖廚クロノメーターであると思って頂ければ解り易い。

機械式時計として見れば確かに高精度と言える。(安価なクォーツ時計に及ばないが。)
多分私の持っている時計でも近しい精度は出ているのだが、現状では(瞬間歩度だが)どの時計も進み気味なのでこの規格には当て嵌まらない。

唯、個人的には精度保証については少々疑問が有るのだ。その為、クロノメーター規格の時計を持っていないのかもしれない。
まず、COSC認定のChronometerよりも厳格な精度規格が沢山有るのだ。例えば日本の「Grand Seiko」の「(新)GS規格」ならば平均日差は-3~+5秒以内である。他にも「Qualité Fleurier」や「Patek Philippe Seal」等Chronometer以上の様々な高精度規格が存在する。
この時点でクロノメーターが最も高精度な機械式時計の証明と言う意味では無くなる。
但し、その殆どが自社に依る検定の為、どこまで信頼性が有るかは解らない。もし精度を保証するなら確実な第三者機関を通して、その上で高精度を証明せねばならないだろう。

そして最大の問題が、OH(オーバーホール:定期メンテナンス)である。
先に「精度を出す事の出来る時計」がクロノメーターだと述べた。実は、クロノメーター規格は販売時(明確には検定時)の精度保証に過ぎず、以降の精度保証が有るモノでは無いのだ。当然ながら機械式時計は様々な要因で歩度に影響が出る。前回の投稿で述べた通りゼンマイの巻き具合だけでこれ程の差が有ったのだ。クロノメーターも例外では無い。(とは言えクロノメーターは狂う幅が少ないのだろう。)
検定を合格したからには、ちゃんと調整し直せば平均日差-4〜+6秒以内にする事が可能である。
だがOHしたからと言って、COSC認定Chronometerを再び合格して返ってくる訳でも無い。つまり一度OHを受けた時計はクロノメーターと名乗れるのだろうか‥
毎回のOH時に改めてCOSC認定を受けているのであれば名実共にChronometerだと言えると思う。その都度精度が保証されているからだ。しかし現状はそうではない。これがクロノメーター規格にそれ程私が価値を見出せてない理由である。(クロノメーターと言う規格自体は非常に良いと思う。唯、私にはその有難味が無いと言うだけである。)

所詮機械式時計は狂うし止まる。毎回適当に時間を合わせているのだから、日常生活に支障無い精度を維持出来ていれば良い。勿論その上で時計師が懸命に調整し精度を追求する姿勢が重要で機械式時計の大きな価値の一つである。

現状のクロノメーターは検査した時点での高精度の証明であり、調整次第で「精度を出す事の出来る時計」と言う証明である。これから更に一歩進んで欲しいのだ。
新素材や新技術に依って、精度維持も飛躍的に向上している昨今、今後はクロノメーターの在り方も変わって欲しいと思う。購入時のみの精度保証でなく購入後及びOH後1年間の精度保証みたいな感じになれば私はクロノメーターを是非とも所持したいと思う。

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